『自動車亭日乗』No.8 2024年5月の印象に残った3台 金子浩久

趣味人コラム
2024.06.21
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・フィアット・パンダCLX

 今月の「10年10万kmストーリー」は、22年24万6000km乗り続けられているフィアット・パンダCLX(1995年)です。

 オーナーさんは高校の美術教師で陶芸作家でもある女性。パンダは、自身の日常的な用途の他、制作のために粘土の塊を200kg載せてアトリエと窯を往復したり、個展の際には作品や各種の展示台やパネルなどを運んだりと八面六臂の活躍をしている。パンダを最もパンダらしく最大限に活用している先生だった。

・MINI COOPER SE

 4代目へと進化したMINI COOPERのEV(電気自動車)にスペイン・バルセロナ近郊で試乗した。3代目にもヨーロッパ市場専用のEVはあったが、4代目では日本でも販売されることになって価格も発表されている。

 エンジン版の「COOPER C」が396万円(以下、消費税込)と「COOPER S」が465万円。EV版の「COOPER E」が463万円と「COOPER SE」が531万円。

 2002年からBMWが造るようになってからのMINIの外観は、そのイメージを保つために大きく改められることがなかったが、今回も大きくは変わっていない。しかし、良く見るとEVらしく変わっているところがいくつもある。

 フロントガラスとルーフやAピラーなどとのつなぎ目がスムーズになり、テールライトユニットの形状が大きく変わったことで、3代目以前と見分けが付きやすくなっている。

 ヘッドライトが丸いのは変わらないが、昼にポジショニングライトとして常時点灯するのは輪としての輪郭の部分とその中の水平線2本の部分。中央部分は夜間に点灯するのが新しい。

 ボンネット上のエアダクトもなくなった。当たり前だ。エンジンが存在しないのだから、空気を取り込む必要がなくなった。でも、細かいことを言うと、EVにまったく空気を吸い込む必要がないということはなくて、バッテリーを冷やすために走行中の空気を導き入れる必要があるのだ。

 テールライトの形は初代から3代目までは長方形だったのが、4代目は三角形。その左右両側の頂点同士を装飾用ガーニッシュパネルで結び付け、そこにCOOPER Sとグレードが記されている。

 インテリアも大きく変わった。ドライバーの眼の前のこれまで通りのメーターパネルがなくなり、センターの丸型モニターパネルとヘッドアップディスプレイに必要な情報が表示される。

ダッシュボード
ドアパネル

 ダッシュボードやドアパネルなどには再生プラスチックが、エアアウトレットやスピーカーユニットなどにも再生アルミニウムが用いられている。もちろん、見ても触ってもそれはわからない。

スピーカーユニット

 また、MINIに限らず、これまでだとドライビングモードとしてボタンなりレバーなりで、加減速特性やシフトパターン、ステアリング特性などの違いを選べるクルマが多かったが、この新型MINI COOPER SEでは“EXPERIENCES”という呼び名のレバーに代わっている。

 レバーを上下させると、“CORE”(いわゆるノーマル)、“GO KART”(スポーツ)、“GREEN”(エコ)、“VIVID”、“TIMELESS”、“PERSONAL”と切り替わっていく。

 この中で、走行特性が切り替わるのが、COREとGO KARTとGREEN。PERSONALは好みの走行特性と気に入った画像をセンターパネルの背景に設定できるポジション。VIVIDは音楽を選んだり、流れている楽曲のカバーアートに合わせたライトエフェクトが25色の中から自動的に選定され、ダッシュボード上に投影される。これは面白そうで、ぜひ試したかったが時間切れ。

 TIMELESSでは、BMWが製造する前のクラシック・ミニの排気音が擬似的に発せられる。どのモードでも、センターパネルのデザインが変わる。どれもキレイで見やすい。設定を変えれば、各モードの開始時にジングル音を発することもできる。  

 こうした装備は“ギミック”と蔑まれてしまう場合があったが、この新型MINI COOPER SEのEXPERIENCESには新しい意味が込められているように思えた。

 ドライビングモードやNORMAL、またはSPORT、あるいはECOなどといったクルマの機能の用語や概念などをそのまま剥き出しでユーザーに提示するのではなく、それらをいったん新型MINI COOPER SEが設定している世界観に置き換えて提示している意味は小さくない。

 新型MINI COOPER SEという「機械」をそのまま提供するのではなくて、中身は変わらないのだけれどもあくまでも「商品」として提示できるように仕切り直している。

 最高出力160kW、最大トルク290Nmを発揮するモーターで前輪を駆動し、0-100km/h加速は6.7秒。ボディ床下に搭載されているリチウムイオンバッテリーの容量は、136.0Ah/54.2kWhで、日本仕様の航続距離は446km(WLTC値)。ちなみに、126.0Ah/40.7kWhと小さな容量のバッテリーのMINI COOPER Eの航続距離は344km(WLTC値)。0-100km/h加速は7.3秒。

 MINI COOPER SEの走りっぷりは、EVらしく滑らかで静かな加速であるのは当然として、SUVと違って車高や重心が低いこともあって安定感が高く、加減速やコーナリングなどに伴ったボディの前後左右への揺れ動きも小さく、とても上質なものだ。

 運転支援機能は最新のBMWそのものなので、渋滞時のハンズオフが可能だ。インターフェイスに大変に優れており、ユーザーフレンドリーでとても使いやすいことは、同じものが搭載されている、2023年に登場したBMW iX1で高く評価したばかりだ。

 アダプティブモードに設定できる回生ブレーキも優れていて、使いやすい。違う名前で他メーカーのクルマにも搭載されているが、前車との車間距離や加速度、減速度などとの違いをカメラやレーダーが自動的に検出し、回生ブレーキを加減する。安全と燃費の両方に寄与する最新の電動車ならではのデバイスだ。体験してしまうと、付いていないクルマには戻りたくなくなる。

”CORE”でカーナビの地図画面が拡大されている時。曲がるべき角が近づいてくると自動的に上半分がカメラ画面に切り替わる。次の角を右に曲がるので、>>>>と案内のための矢印が出てきている。
”GO KART”。ブラック基調のデザインで白と赤がアクセントに用いられている。
”TIMELESS”。ベージュ基調のベースに数字や文字がクラシカルなフォントに変わる。​​​​
”CORE”のカーナビ地図画面。進路変更をするのは数㎞先で、走行中の道路名を示している。

・BMW VISION Neue Klasse

 麻布台ヒルズにオープンした「FREUD by BMW」のレセプション会場に展示されていた「BMW VISION Neue Klasse」。

 BMWが2025年以降に製造する新型車のスタイリングコンセプトカーだ。発想の元になっているのは、1961年から72年までBMWが製造した「BMW 1500」に始まる中型セダン群。それらはそれまでのBMW各車と違って新しいエンジニアリングとスタイリングで造られていたことから、当時「Neue Klasse」(New Classのこと)と呼ばれていた。同じ革新をこれから起こそうという意気込みが込められているという名称で、実際にセダンとSUVが登場するらしい。

プロフィール

Hirohisa Kaneko【金子 浩久】
 

モータリングライター。
クルマとクルマを取り巻く人々や出来ごとについての取材執筆を行なっている。
最新刊は『クラシックカー屋一代記』。

https://www.kaneko-hirohisa.com

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