『自動車亭日乗』No.9 2024年6月の印象に残った4台 金子浩久

趣味人コラム
2024.07.18
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・BYD SEAL(シール)

 2023年から日本でもEV(電気自動車)を輸入販売するようになった中国有数の自動車メーカー「BYD」(Build Your Dreamの頭文字)のEV「SEAL」(シール)に箱根の山道で乗った。

 モーターを前後にひとつずつ搭載し、それぞれが前輪と後輪を駆動する4輪駆動の「SEAL AWD」とリアに搭載したモーターで後輪を駆動するベースモデルの「SEAL」のふたつのグレードが存在する。

 2台はモーターの個数と駆動方式が異なるのに従ってサスペンションのダンパーも違ったものを組み込んでいる。これが運転感覚に大きく作用していた。「AWD」はあらゆるコーナーやアップダウンでフラットな姿勢を保ち続けながら、路面からの入力を巧みに吸収することに成功している。背の高いSUVではなく、セダンであることの重心位置の低さも相まって、とても上質なハンドリングと乗り心地を実現しているのに驚かされた。
 

 しかし、「AWD」に較べてしまうと、「SEAL」の運転感覚や乗り心地などは少し見劣りしていることは確かだ。価格(税込)は、「AWD」が605万円、「SEAL」が528万円。導入から1000台限定のキャンペーンが行われており、「AWD」が572万円、「SEAL」が495万円という特別価格が適用される。ここからさらに自治体などの補助金が交付されることになるので、価格の安さはどちらのグレードにとっても大きな武器になっている。

 とても魅力的な走行性能と価格設定だが、残念な点もあって、インテリアデザインのディテイルが古臭く、エクステリアデザインにはくどい装飾が見受けられる。

 トランクも広く、航続距離(申請中)がAWDが575km、SEALが640kmと十分以上に備わっているので、実用性は高いだろう。

・トヨタ・クラウンアスリート

 今月の「10年10万kmストーリー」は、5年10万7000km乗り続けられているトヨタ・クラウンアスリート(2001年)。クラウンが日本の最高級セダンに君臨していた時代の貫禄を示していた。

 時代が変わり、クラウンもモデルチェンジを繰り返し、レクサスが日本でも展開されるようになり、現在ではクラウンの立場も役割も変わってきた。

 オーナーさんは満足して乗り続けていて、コンディションも良く、とても似合っていた。そんなクラウンアスリート・オーナーだったが、意外な好みと趣味を持っていることも判明。出掛けていって話を聞く取材の醍醐味を堪能させてもらった。

・アルファロメオ・ジュニアZ

 クラシックカーを共同所有するサービス「RENDEZ-VOUS」が新システムでの契約者募集を始めた。横浜にあるRENDEZ-VOUSには、何台かのクラシックカーが並べられていたが、その中で惹かれたのがアルファロメオのジュニアZ。
 

 ジュニアZは、日本でもファンの間でポピュラーなジュリアGTのスペシャル版として1970年前後の5年間に製造されていた。ジュリアGTがアルファロメオの王道的なクーペボディを纏っているのに対して、こちらのジュニアZはカロッツェリア・ザガートによる個性的なデザインが施されているのが魅力となっている。50年以上も前に発表されたにもかかわらず、いま見ても古さを感じない。アルファロメオとカロッツェリア・ザガートのコンビネーションは1989年にもクーペタイプのアルファロメオSZを、そして1992年にはオープンタイプのRZを発表し、それぞれ製造して日本にも存在している。どちらも個性的で独特なかたちをしていて、強い存在感を示している。
 

 RENDEZ-VOUSでジュニアZを4人で共同所有するとなると、頭金17.4万円と月額6.3万円を支払い、1年間で72日間乗れる。8人の場合は、頭金9.3万円と月額3.4万円を支払って年間36日間使用できる。

・ベントレー・コンチネンタルGT

 ベントレーの「コンチネンタルGT」が4代目にモデルチェンジした。初代は2003年に発表されているから、20年を経過して4代目を迎えたのは感慨深い。

 初代がジュネーブショーで発表された姿は眼の前で見ていたし、各モデルは国内外のいろいろなところで運転した。日本には導入されなかったフォルクスワーゲン・フェートンのシャシーとパワートレインを活用しながらも、独自の“ベントレーの世界”を作り上げているところが見事だった。
 

 4代目のハイライトの一つ目は、ご覧の通り2眼タイプのヘッドライトに変わったこと。これまでは4眼タイプだったので、だいぶ違って見える。

 二つ目は、ベントレー史上最もパワフルになったパワートレイン。最高出力782馬力と最大トルク1000Nmは、4.0リッターガソリンV8エンジンにモーターが組み合わされたPHEV(プラグインハイブリッド)システムが発生している。

 日本へのデリバリーは2025年第一四半期を予定していて、価格は「コンチネンタルGTスピード」が3930万3000円(税込)、

画像のコンバーチブルで高性能版の「GTC スピード」が4312万円(税込)。

プロフィール

Hirohisa Kaneko【金子 浩久】
 

モータリングライター。
クルマとクルマを取り巻く人々や出来ごとについての取材執筆を行なっている。
最新刊は『クラシックカー屋一代記』。

https://www.kaneko-hirohisa.com

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