・ベルトーネ X1/9
1990年から掲載メディアを換えながら、現在はnoteと「モーターマガジン」誌で連載を続けている筆者の「10年10万kmストーリー」で、今月取材したクルマはベルトーネ X1/9。エンジンをミッドに搭載する2人乗りの小型スポーツカーで、屋根を外してフロント部分のトランクに収めてオープンで走ることもできる。
X1/9は、最初1972年に「フィアットX1/9」としてデビューし、マイナーチェンジを経て1982年には実際に組み立てをフィアットから委託されて製造していたカロッツェリア(馬車時代には馬車を製造していた業者のことをイタリア語での呼び方。英語ではコーチビルダー)の「ベルトーネ」名義の「ベルトーネ X1/9」として製造が続けられた。そのX1/9(1985年)に新車から39年19万3000km乗り続けている男性を訪ねた。
男性はX1/9に乗り続けながら、休暇中に妻子を連れてイタリア・トリノ郊外のベルトーネを訪れたりして自動車デザインに関する見聞を深めていった。乗って満足するだけでなく、自動車から広がっていく世界を楽しんでいた。

・TVR グリフィス スピード500
筆者が棚を借りて「金子浩久書店」を営業している東京・神保町のシェア型リアル書店「PASSAGE」で、1月10日に“一日店長”を務めた。自著の他に棚に収まり切らない大判の写真集や発行されたばかりの自動車雑誌「クラクション」などを中央の大きなテーブルに並べて売った。
事前にSNSなどで告知しておいたので、大勢の来店者に恵まれ、雑誌は完売し足りないくらいだった。他の本もたくさん売れてくれて、1日だけとはいえ店頭に立ったことで、リアルに対面できる“場”のあることの重要性を改めて痛感させられた。
うれしかったのは、note版「10年10万kmストーリー」の第1回で取材させてもらったTVR グリフィス スピード500(1993年)に14年8万8000km乗り続けていたYさんがご友人と来店してくれたことだ。そして、そのYさんを紹介してくれた旧知のTさんも来店中で、初めて3人で会うことができて偶然に感謝した次第。
取材時にYさんはグリフィスを2台持っていた。グリフィスは昔に僕も持っていたことがあり、あんなジャジャ馬をよく2台も持てるなと驚かされたのを良く憶えている。

・ホンダ プレリュード
ホンダのプレリュードが2025年中に復活するようだ。1月10日から12日に幕張メッセで開催されていた「東京オートサロン」にもプレリュードのコンセプトカーが展示されていた。
プレリュードは1978年に発表された初代から、1996年から2001年にかけて5代目が製造されていた、ホンダのスペシャリティカー(この呼び方も懐かしい)。
5代目が生産終了してからすでに四半世紀以上も経っているけれども、果たして6代目はどんなクルマに仕上げてくるのか、今から楽しみだ。

それとは別に、ときどき前を通る道沿いの家の赤い4代目プレリュードが気になっている。あまり乗られていないようなのだけれども、きれいにして走ったらカッコいいのになあ。

・ポルシェ 356
写真家の秦 淳司氏が114台のクルマを撮影した写真集「ENGINE ERA」(DIAMOND HEADS発行:税込価格3万3000円)の発刊を記念したオープニングパーティが1月18日に行われて参加してきた。
会場は、北参道の「Kitasando garage/Flip Flip Coffee Supply」(渋谷区代々木1丁目21-5)。クラシックカーの展示販売を行うカフェとして営業されている。この日も店内にはやや淡いブルーのポルシェ356(価格2300万円)が置かれていた。
写真集に収められた写真のうちの何点かが大きくプリントされ、店内で展示販売もされていた。「ENGINE ERA」にはプリント割引券が入っている。
製作スタッフによれば、写真集に収められた写真は秦氏が雑誌「ENGINE」(新潮社発行)の表紙を撮影した時に撮られたものと、ニューヨーク郊外のラルフ・ローレンのプライベートコレクションを撮った時のものだそうだ。スタジオや屋内で撮られており、自動車の静的な美が追求されている。B4変形判336ページ、2.3kg。展示は2月18日18時まで行われている。


・シトロエン アミ6
知人から紹介されて北新宿の絶版ミニカー専門店「レトロ・モビル」に行ってきた。
すぐ近くの大通りは昔から四六時中通っていたのに、こんなにマニアックな店があることはまったく知らなかった。
ザッと見せてもらった感じから、日本車のミニカーもあるが、ヨーロッパ車の方が多そうだった。レーシングカーも揃っているが、乗用車が多い様子。
シトロエンが多いように感じたことをお店の人に伝えると、「当店ではシトロエンのミニカーが人気だから」だそうだ。さまざまなスケールのCXやDSが眼に付く。最も多いのはDSだそうで、やはりあの造形を手元に置いてみたくなるのだろう。
「入荷したばかりのアミ6です」
ブルーのアミ6はプラスチック製とのことで、特徴的なルーフ後端のクリフカットが巧みに表現されていた。

・BYD シーライオン7
1月24日に、中国の自動車メーカーBYDがお台場のシティサーキット東京ベイで「事業方針発表会2025」を開催した。
日本での事業展開10周年を迎えるEV(電気自動車)バス事業のブラッシュアップや新たに展開するEVトラックなどについて、劉 学亮氏(BYDジャパン株式会社 代表取締役社長)が力強く語った。45分を超える日本語でのスピーチは少しも淀むことなく情熱的だった。
乗用車については、日本での4台目となるクロスオーバーSUVタイプのEV「シーライオン7」が発表された。昨年から販売されている「シール」とプラットフォームなどを共用し、ボディを5ドアハッチバックに改め、内外装に変更が施されている。航続距離は1基のモーターで後輪を駆動する「RWD」モデルが590km、2基のモーターで4輪を駆動する「AWD」モデルが540km。4月発売予定。

プロフィール
Hirohisa Kaneko【金子 浩久】
モータリングライター。
クルマとクルマを取り巻く人々や出来ごとについての取材執筆を行なっている。
最新刊は『クラシックカー屋一代記』。