・ニッサンR390GT1
9月17日に横浜の日産本社ギャラリーで行われたNISMO40周年記念式典会場にはNISMO40周年を象徴する多くのクルマが展示されていたが、見入ってしまったのが「ニッサンR390GT1」だった。
1998年のルマン24時間レースで3位に入っただけでなく、他の3台のR390GT1も5位、6位、10位とエントリーした全4台が10位以内に入賞したという好成績を残したクルマとして知られている。
ただし、日産としてはルマン24時間レースでは現在までこの1998年の結果を超えられていないのが残念だ。トヨタは5連勝し、マツダも1勝しているのだから、今後に期待したい。
レース後に東京で会ったドライバーの鈴木亜久里の言葉を憶えている。
「ルマンって、レースが終わった瞬間に観客がコースに入ってくるでしょ。表彰台に上がって3位のトロフィーを受け取る時には、もう何千、何万という大観衆が足元に集まってきていて、全員がこっち向いて声援を送ってくれるんだ。あの時は、24時間レースの大変さなんて忘れちゃうくらいに感激したね」
トヨタが5連勝した後のルマン24時間レースは、2023年、24年とフェラーリが58年ぶりに連勝した。
・フィアット 600e
600eは一昨年の500eに続くフィアットの新型EV(電気自動車)。500eはエンジン車時代の500(チンクエチェント)のデザインイメージを踏襲し、同じ2ドアでもあったので面影は残せたのだが、600eは4ドアになってしまった上に、あえて似せようとはしてきていないようだ。あくまでも名前とイメージのみ。ポーランドのフィアット工場で製造される。
・フォルクスワーゲン ゴルフ
今月の「10年10万kmストーリー」は、18年21万4000km乗り続けられているフォルクスワーゲン ゴルフ(2005年)。家族が増えた時に買い足した同じVWのシャランにも乗っている。
・ベントレー マーク6スペシャル
ベントレーが1950年に製造したマーク6を、イギリスのHalse engineeringというコーチビルダーが1970年代中頃に元々の5人乗りサルーンボディを降ろし、特別な2シーターのスポーツカーボディに改造したスペシャル。
この時代のベントレーのような高級車は頑丈なフレームの上に別体のボディを載せて造られていたので、それを載せ替えることによってたびたびこうした特別版が造られていた。16台造られたらしい。
・ボルボ EX30
ボルボの新型EV「EX30」の内装では、新しい試みがいくつかなされている。ひとつは、ボタンやレバーなどをほとんどなくしてセンターパネルのタッチと音声操作で行うようにしたこと。
もうひとつは、ドアやシート、ドアオープナーなどにリサイクル素材や再生可能素材を多く用いていることだ。
クルマの多機能化と高機能化は止まらないのに、内装の表面積は限られていて、ドライバーの運転処理能力にも限界がある。デジタル化も進んでいるから、あらゆる操作を使用頻度順に階層化しシンプルにまとめようとするのは自然の流れだ。
しかし、テスラのようにEVからクルマを造り始めたメーカーならば、その流れに乗りやすい。だが、ボルボのようにエンジン車で長い実績と歴史を重ねてきたメーカーが自らの過去と決別するのは簡単ではない。でも、EX30では成し遂げられている。いま最も先進的なドライバーインターフェイスを備えている。
・T-Cross
フォルクスワーゲンのコンパクトSUV「T-Cross」がマイナーチェンジを行った。機能面ではほぼ変わらないが、上級版の運転支援機能「Travel Assist」が全グレードで標準装備された点が大きい。
パワートレインの電動化も施されておらず、以前から変わらない造形や素材遣いなどもあり、それらをまとめ上げるセンスもフレッシュとは言い難い。
良い点は、エンジンとトランスミッションの組み合わせ。節度があり、落ち着いている。遮音も抜かりなく、他車ほど騒がしくない。
プロフィール
Hirohisa Kaneko【金子 浩久】
モータリングライター。
クルマとクルマを取り巻く人々や出来ごとについての取材執筆を行なっている。
最新刊は『クラシックカー屋一代記』。