・プリンス1900スプリント(レプリカ)
この赤いクルマは、昨年(2023年)の秋に横浜の日産グローバル本社ギャラリーにしばらく展示されていた「プリンス1900スプリント」(レプリカ)そのものだ。試作車が1963年の東京モーターショーで発表され、その美しさは当時、大いに話題となったが、残念ながら製品化されることはなかった。
試作車はしばらく日産社内で保管されていたが、それもある時に廃棄されてしまった。つまり、長い間、現存していなかった。しかし、熱心な大阪のファンが独自に再現して1台造り上げてしまった。
図面も残されていなかったので、写真から再現するしかなかった。日産も協力を惜しまなかったので、ギャラリーで展示されていたというわけである。
そのプリンス1900スプリント(レプリカ)を見学させてもらうことができた。ボディの小ささは想像していたが、曲面と曲線の表情の豊かさに驚かされた。現代のクルマで、ここまで“饒舌な”表情を有したものは見当たらない。過去は美しく思いがちだけれども、実に惜しいことをしたものだと思う。
・ポルシェ 911カレラ
今月の『10年10万kmストーリー』は、25年5万5000km乗り続けられているポルシェ911カレラ(1995年)。空冷エンジンを搭載した最後のモデルで、オーナーさんも空冷モデルが入手できなくなってしまうのではという危機感から入手した。久々に空冷911に乗せてもらったけれども、水冷化された911では得られない大きな感興が備わっていることを再確認することができた。
・イーグルワゴン
4月12日から14日まで幕張メッセで開かれた「オートモビルカウンシル」の主催者特別展示「アメリカンヘリテイジの名車たち」のうちの1台、AMC・イーグルワゴン(1983年)。AMCという、もう消滅してしまったメーカーのステーション・ワゴン。
スキーに夢中になっていた1980年代から90年代に、僕はこのクルマに憧れていた。SUVというカテゴリー自体がまだ存在していない時代に、アメリカ車のワゴン、それもイーグル・ワゴンは4輪駆動を備えていたので、夢のクルマだったのだ。
スバル・レオーネバンも4輪駆動を備えていたけれども、所詮はバン。ワゴン、それも“アメ車のワゴン”の豪華さや快適性には敵わなかった。現代の日本で同じ方向性を求めるとすれば、メルセデス・ベンツの「Eクラス オールテレイン」を選ぶ。エアサスペンションを採用しているので、高速道路の長距離走行は快適だし、悪路で最低地上高を上げることができる。いま見ても、イーグル・ワゴンは魅力的だ。
・ブリストル401
同じオートモビルカウンシルで多くの来場者の眼を惹いていたのが、ブリストル研究所の「ブリストル401」。あえて、塗装を落とした状態のアルミの地肌を見せて展示していた。ブリストルの出自が航空機メーカーであり、ボディにアルミニウムを使用していることをアピールするため。
・仰望U8
日本でも昨年からEVを販売し始めている中国最大の自動車メーカーであり、EVの販売台数でテスラを抜いて世界一となったBYDが昨年から展開している「仰望」(ヤンワン)の大型SUV「U8」。
PHEVで1基のエンジンになんと4基ものモーターが組み合わされている。それぞれを個別に制御して走るため、その場で360度ターンする「タンクターン」も可能。この画像を撮った北京市内のショールーム内の敷地で実際に行って見せてくれた。
システム総合最大出力は1200馬力、3.5トンを超える超重量級なのにもかかわらず、0-100km/h加速は3.6秒という俊足を実現している。もちろん、さまざまな路面や道路に対応できる走破性能を有している。実際に運転してみたい。
プロフィール
Hirohisa Kaneko【金子 浩久】
モータリングライター。
クルマとクルマを取り巻く人々や出来ごとについての取材執筆を行なっている。
最新刊は『クラシックカー屋一代記』。