全てが電動車となった「5」の最新マシン
BMW i5 M60 xDrive
毎年恒例のJAIA(日本自動車輸入組合)大磯試乗会でBMWの最新EV「i5 M60 xDrive」に試乗した。時間も限られ、箱根ターンパイクも乗り入れ禁止などと制限付きで、西湘バイパスも工事による渋滞が続くという悪条件が重なった。
「i5」とは、8代目となる新型「5シリーズ」シリーズに設けられたEVのこと。その高性能4輪駆動版が「i5 M60 xDrive」となる。
新しい5シリーズは、ガソリンやディーゼルなどのエンジン搭載版もあれば、このi5のようなEVもある。どのパワートレインも対応できるようなプラットフォームとして、あらかじめ設計されている。
搭載されるガソリンエンジンもディーゼルエンジンもマイルドハイブリッド化されたから、新型5シリーズはすべて“電動化”されたことになる。コンセントから充電できるPHEV(プラグインハイブリッド)も追加予定。
フロントに261馬力、リアに340馬力を発生するモーターを搭載し、システム合計601馬力にも上るi5 M60 xDriveの高性能の上澄みぐらいしか試すことができなかったが、一端を感じることはできた。大きく、2.4トン近い重量をまったく感じさせない加速と鋭いコーナリングを見せる。
最新のBMWなので、2023年のX1で感銘を受けた運転支援機能「アシストドライブ」も実装されている。ドライバーインターフェイスも新しく、驚くほど多機能ですべては試せなかったのが残念だった。いつか長距離を試してみたい。
再上陸第三弾はやや個性弱し
ヒョンデ コナ-ラウンジ
日本再上陸を果たしたヒョンデからの第3弾となるEV「コナ-ラウンジ」。こちらも、JAIA大磯試乗会で乗った。フロントに最高出力204馬力のモーターを搭載して前輪を駆動する。大きさとしてはCセグメントに属する、やや背の高いSUVということになるが、シティユースに頃合いの使いやすそうなサイズ感だ。車両価格は489万5000円(消費税込)。
ボディの造形は、さまざまな線や面、装飾などが交錯していて忙しなく感じる。“手数”が多い割に、個性的に見えず、印象に残りづらい。先に登場している「アイオニック5」とは、とても対照的だ。
内装はアイオニック5と共通するセンスでまとめられている。評価したい点がふたつあって、一つ目はメーターパネルにウインカーを左右どちらかに出した時にそちらの側の後方視界をカメラを通じて大きく映し出せること。ウインカーと連動しているところが使いやすく、見やすい。二つ目はセンターモニターに機能を集約させ過ぎず、物理ボタンも適度に残していることだ。頻繁に使うことになるUSB充電ジャックも使いやすいところに配されている。
走りは、EVならではのスムーズで低速域から速さを示しているもの。バッテリー容量は64.8kWhで、航続距離は541km(WLTCモード)。
日本上陸50年美しきアルミボディ
ベントレー 3.5リッター 1935年
ロールス・ロイスとベントレーをはじめとするクラシックカーを扱っている「M&K Wakui」のオフィスにディスプレイされていたのは、1935年製のベントレー3.5リッター。戦前のベントレーはすべて、さまざまなコーチビルダーが製作したボディが架装されていたが、このクルマにはバーカーというコーチビルダーによるアルミニウム製ボディが架装されている。
前開き2ドアを持つ「Close-Coupled」と呼ばれる4人乗りサルーン。真横から見た時のリアウインドウの形が独特で、美しい。日本で初めて登録されたのが1974年なので、なんと今年で50年を迎える。
オンライン会議も出来る! 6代目「E」
メルセデス・ベンツEクラス
メルセデス・ベンツのEクラスがフルモデルチェンジして、セダンとワゴンがそれぞれ6代目へと生まれ変わった。千葉県のゴルフ場をベースとして行われたメディア試乗会に参加。ディーゼルエンジンとトランスミッションとの間に電気モーターを組み合わせた「ISG」を搭載する「E 220 d AVANGARDE」セダンと、ガソリンエンジンによるPHEV「E 350 e Sports Edition Star」に、それぞれ1時間ずつ乗った。どちらも電動化されており、違いはコンセントから充電できるかどうか、だ。
「E 220 d AVANGARDE」セダンは、ディーゼルエンジンを搭載しているが、あらためて静かでスムーズなことに驚かされる。クリーンディーゼル自体の静粛性の高さや振動の少なさが基本にあり、そこに組み合わされる9速のオートマチックトランスミッションの状況に応じた緻密な変速やモーターによるアシストなどの効能が大きい。パワートレインとしての洗練が進められている結果だ。これで長距離を走ってみたい。疲労が少なく、恐ろしく快適なはずだろう。
「E 350 e Sports Edition Star」には、さまざまな走行モードが備わっていたが、ハイブリッドモードを中心に走っていると、ほとんどエンジンが掛かることなく、モーターだけで走っていた。地方の山間部と市街地の一般道だけを走ったので、電気の力だけでこと足りたのだろう。スポーツモードでも、エンジンが回っている時間は限られていた。
どちらのモデルにも、最新のドライバーインターフェイスがいくつも採用されていた。
ドライバーのジェスチャーでさまざまな室内機能をコントロールして運転支援する「MBUXインテリア・アシスト」、デジタルキーを家族や友人などと共有することでクルマの施錠と解錠、運転できたりもする。また、サードパーティ製アプリをダウンロードして使えたり、YouTubeアプリまで装備されていたのには驚かされた。試してみたら、「この速度では画像を再生できません」と音声だけは聞くことができた。YouTube動画の中には、画像よりも音声や演奏などを楽しむものもあるので、活用するオーナーは少なくないだろう。
さらに、ダッシュボード上面の中央部分にある半円形の突起状のものは室内カメラだ。停車中ならば、Zoomなどのアプリを使って
オンライン会議を行うこともできる。
他にも、新機能があって見逃していたかもしれない。それだけ、今までになかったものが多い。とてもすべては確かめられなかった。
これからのクルマは、従来からの「走る・曲がる・止まる」といった機能を進化させていくことだけを新型車の価値とするのでなく、「走る・曲がる・止まる」以外の、それまでは存在していなかったまったく新しい機能を付け加えていくことが価値の軸となっていく。それは間違いない。断言できる。
オンライン会議じたいが新しいものなのに、それを停車中とはいえ、こんなに早くに車内で行うためのカメラが装備されるようになるなんて、誰が想像していただろうか?
人間と荷物を乗せてA地点からB地点までのを走る(だけ)だったクルマというものが大きく変わっていっている。新型Eクラスがその先頭を行っていることは間違いない。すべてを試すことはできなかったけれども、理解することはできた。
新車から32年8万2000km!!
デイムラー・ダブルシックス
noteの「金子浩久書店」と『モーターマガジン』誌で毎月連載している「10年10万kmストーリー」で、2月に取材させてもらったのは新車から32年8万2000km乗り続けられているデイムラー・ダブルシックス。
オーナーさんは、とても元気でチャーミングな85歳の女性。東京で生まれて育ち、20歳で運転免許を取って最初のクルマはいすゞ・ベレット1600GT。その後に結婚し、ダブルシックスは6台目。人に会って話すのが好きで、美味しいものに眼がない。東京のことを良く知っている。面白い話がたくさん聞けたので、ぜひ記事を読んでみて下さい。
プロフィール
Hirohisa Kaneko【金子 浩久】
モータリングライター。
クルマとクルマを取り巻く人々や出来ごとについての取材執筆を行なっている。
最新刊は『クラシックカー屋一代記』。