『水平線に恋をして』第三話 2024ジャパンインターナショナルボートショー趣味的見どころ案内 山崎憲治

大人の逸品エッセイ
2024.03.06
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 63回を迎える2024年横浜インターナショナルボートショーが3月21日(木)~24日(日)パシフィコ横浜と横浜ベイサイドマリーナを主会場に開催される。今年もいよいよ海のシーズンの始まりだ。最新のマリンのトレンドが垣間見える。国内メーカー、インポーター各社は自動車業界で使われているCASEを意識し100年に一度の大変革マリン版CASE、「Connected」コネクテッド、「Autonomous」自動運転、「Shared&Service」シェアリング、「Electrific」を意識した製品の展開も期待できる。カーボンニュートラル、SDGs、BEVパワープラントの取り組みなどの展示を含めて世界の新たなマリントレンドが見えてくる。

 マリン分野でも国内を代表するヤマハ発動機を見てみよう。2024年2月のマイアミボートショーに参考展示としてV8‐5.6Lの水素エンジン船外機をお披露目、またEVパワープラントのリーディングカンパニー、ドイツのTorqeedoトルキード社の買収などカーボンニュートラルへの取り組みをメッセージしている。電動化、水素エンジン、バイオ燃料、そこに未来が見えるはずだが、残念ながら水素エンジン試作機のこのボートショーでの展示はない。コネクテッドでは「Siren Marine」との協業でスマートフォンでの遠隔監視システムなどを開発、更に点検時期やメンテナンス履歴や、遠隔地からも自船の内容が分かるシステムなどの運用が始まっている。自動運転でもオートパイロットの進化、ヘルムマスターでは船外機コントロールの電子化、定点維持、自動着岸機能の実現等、その先の自動運転に向けてチャレンジは進んでいる。シェアリングはヤマハマリンクラブ・シースタイルの実施、発展。またフィンランドのシェアリングベンチャー「Skipperi」へ出資、デジタルトランスフォーメーションDX対応の開発力強化に。Electricでは一昨年自社でEVパワーによる次世代操船システムHARMOを開発、欧米での販売開始、昨年からは国内での観光ボートへの実験採用をしている。近未来はTorqeedoとの協業でEVプラントの小型船への展開が大いに期待される。

 会場を見渡してみる。パシフィコ横浜会場はヤマハYFR330やヤンマーEX38HTなどこのボートショーでのデビュー艇が展示される。ホンダは5L、V8、350psの船外機BF350をデビュー展示。古野電気などの最新航海計器、各種マリンギア、各地のマリーナブース、マリン関連以外にもスーパーカーやラグジュアリーカー各ブランドの最新モデルがずらりと並ぶ。最近はキャンピングカーも話題を集めている。ラグジュアリーブランド等のブースがある。ずらりと海のエンターテーメントゾーンが展開する。2会場を結ぶのはぷかりさん橋からのシャトルボートとシャトルバスがある。 大型艇がフローティングで展示される横浜ベイサイドマリーナを中心にまずは展示艇の中から気になる艇をピックアップしてみよう。展示ボート42艇、セーリングボート16艇。スーパーヨット内覧会と称する内覧会、ラグジュアリーボートのインテリアを体験する、フローティングビラの体験を。Ferretti870とMarquis500SBが用意されている。いつかは購入の思いで展示ポンツーンを歩いてみよう。セーリングボートは詳細を省く。

▲過去開催されたボートショーの様子(パシフィコ横浜)

 まずはフランスからヤマハが輸入するPRESTIGE。美しいPRESTIGEサロンクルーザーが520、460、420と並ぶ。日本仕様のインテリアなど至れり尽くせりの安定感あふれるたたずまいがいい。ポンツーンのコーナーにはヤンマーEX47、EXシリーズ最大の大型フィッシングボートだ。新たなハル、新型エンジン、アンチローリングジャイロ搭載可能。最新の電子機器搭載、フィッシングからクルージングまでマルチ対応可能なボートと。 並んでAZIMUT48Fly、更にSarnico Spider46GTS、イタリアのハイブランドボートの誕生の地イセオ湖生まれのスポーツボート。イタリアンスーパースポーツカーのマリン版、トップクオリティの設えが光る。フランスのヨットのトップブランド、ジャヌーが生み出すボートDB43。サイドテラスが展開する遊び心満載のウイークエンドライナー。船外機、船内外機の選択可能。ヨットがしばらく並ぶがその先には興味深いボートたちが待っている。 フランスのヨットブランド、ベネトウのボート、ANTARES11FLYがいる。なかなか興味深いレイアウト。船外機2機がけなのにフライブリッジをもちサイドデッキも広がるサロンクルーザー、トレンドのすべてがここにある。

▲過去開催されたボートショーの様子(横浜ベイサイドマリーナ)

 近年静かなブームを見せているのがバルト海沿岸諸国のマルチパーパス、クロスオーバー、SUVと表現されるボートたち。特にフィンランド製のボート、NordStarノードスター、Targaタルガ、SARGOサルゴ、AXOPARアクソパー、Saxdorサックスドール、Quarkenクラーケンが話題となっている。バルト海北部の50.000にも及ぶ島々が織りなすアーキペラーゴ多島海という魅惑に満ちたマリンフィールドを背景に生まれたブランドの数々。オープン艇含めすべてが新時代のスレンダーなハルを持ち、中にはレーシングなステップドハルを採用する艇も多い。キャビンを持つ30フィートオーバーの艇はフロントスクリーンがリバースウインドウ、北欧のワークボートのフォルムを共通項のように採用している。インテリアはチークなどの木製インテリア、採光豊かなウインドウ、さわやかな色使い、北欧デザインの心地よさは住居のリビングデザインでも静かなブーム、北欧製ボートとの共感共通性が生きてくる。それぞれの艇のキャビンレイアウトなどインテリアを見て楽しんでほしい。船外機、船内外機の選択など選択を楽しみ購入後のクルージングの夢を見てみよう。
 
 メガヨットバースに入る。北欧ブームのエリア。まずは海のグランドツーリングカーの異名を持つAXOPARゾーン、25Cross Top、37XC、28CABINが集まる。ウイークエンドボートSARGO28、ポーランドのスポーツトローラーParker920がいる。脇にはモダンなイタリアンデザインのSAXDOR320GTO.GTCがいる。トップスピード50ノットのパフォーマンスを隠すようにオープンテラスを持つアウトドアギアだ。更にメインポンツーの内側にはQUARKEN27CABIN,27T‐Topが並ぶ。北欧ブームの立役者Targa27.2が位置し、更にずらりとNordstar26⁺、28⁺、31⁺がそろい踏みしている。この北欧バルト海ゾーンは一艇一艇見ていきたい。最新のミドルレンジの欧州トレンドを感じ取ることができる

 さらに大型艇には魅力的な最新モデルが展示されている。イタリアのラグジュアリーなベストセラーブランドAZIMUT。 デビューしたばかりのAZIMUT 53 FLYとS8。マリンデザインの奇才アルベルト・マンチーニのデザインになるスポーティなフォルム、上部構造物をカーボンにした低重心の実現によるスポーティな走行性能を確約した。その先にはアメリカのスポーツフィッシャーマンを代表するVikingが並ぶ。44、48オープン、52、58コンバーチブル。アウトリガー、ツナタワー、カジキとのタフなファイティングが目に浮かぶ。続いて英国のサロンクルーザーPRINCESSプリンセス。モダンフォルムのF45、F50、なんと昨年ワールドプレミアデビューしたばかりのY85が展示されている。そのイクステリアデザインはイタリアのピニンファリーナ。おそらく展示艇の中で15億円を超えるもっとも高額なプライスのボートと思われる。上質な伝統とモダンなトレンドの融合、プリンセスワールドが会場を魅惑する。その隣はスウエーデン生まれのニンバスが並ぶ。405Fly、C11、ノルディックテーストが新世代に伝承されている。続いて並ぶのは英国のダンディズムを象徴するサンシーカー。映画007で最も多く登場するボートブランドだ。その名もドラマチックなサンシーカーマンハッタン55、そしてサンシーカー65スポーツ・ヨット。「2023日本・ボート・オブ・ザ・イヤー」の「大型艇部門賞」と「ベストファン賞」をダブル受賞した話題のボートだ。フライブリッジのヘルムステーション(操船席)をまるでスーパースポーツカーのコクピットそのものの設えを実現させ、海上を走る楽しみを倍増させた。21日の投開票では輝かしい「2023日本・ボート・オブ・ザ・イヤー」本賞受賞もあり得る貴重な存在のフネだ。奥に控えるのはクラシカルなフォルムが美しいノースカロライナ生まれのスポーツフィッシャーマン、勇者ハトラス70GT。トーナメントスペシャリティになりたいものだ。更にブラックアウトされたクーペフォルムのボートがいる。ヤンマーX47EXPRESS CRUISERの藤原ヒロシFragment designプロデュース限定モデル。X47はフェラーリのエンツォ・フェラーリをデザインした奥山清行デザイナーの作品。それをベースにカルチャープロデューサーの藤原ヒロシが表現したマリンワールド。インテリアの刺激、一見の価値はある。
 
 セールボートが並ぶ中にコモ湖で生まれたイタリアのクラシカルなブランドCRANCHが2艇、魅力的なトローラーT43とファッショナブルでモダンなE52Evoluzioneがいる。そのノーブルなインテリアも魅惑的だ。その先に老舗台湾ブランドDYNA63がいる。ウッディな趣のサロンを持つモダンフォルムのサロンクルーザー、内覧したくなる。さあフローティングゾーンに漂う最新トレンドに何を感じたか。世界のトレンドはBEVやHVのカーボンゼロを意識したパワーユニットや水中翼のフォイルボート、いつかここで世界のトップレンジのマリンゾーンが展開される日が来ることを願って、今お気に入りのボートを購入するわくわくする夢をみようと思う。

2023日本ボート・オブ・ザ・イヤー部門賞発表されました。 ▶詳しくはこちら

プロフィール

Kenji Yamazaki【山崎憲治】
 

クルマとプレジャーボートに対する情熱と日本人で最も多くの大型プレジャーボートのテスト経験者としての評価が高い、
海外ボートショーでも知られたジャーナリストである。

2008から「ボート・オブ・ザ・イヤー日本」に携わり、現在は「ボート・オブ・ザ・イヤー日本」実行委員長。

2000年から、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」実行委員を務め、現在は同組織で評議委員。

また月刊PerfectBOAT誌顧問。

主な著作は『日本の外車生活』(双葉社)、『新・ニッポンの外車生活』(ネコ・パブリッシング)など。

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