YAMAHA YFR330
至宝のフィッシングゾーンへ、釣りを楽しむ時間の充実を図る。
船外機シリーズのリーディングフィッシャーマン、ヤマハフィッシングレボルーションYFRシリーズの最大艇330がデビューした。既存の24EX、27HMEXの進化版となる。全長10.10m全幅2.99mの快適なキャビンに広々としたデッキスペースを持つ新設計ハルに、新XTOヤマハ最大出力450PSの最新エンジンF450Aを搭載しての登場だ。YAMAHA製ボートの中核をなすのがYAMAHAフィッシング対応モデルだ。まずそのラインアップを見てみよう。内海での流し釣りを意識した船外機艇「F.A.S.Tシリーズ」は23、26フィート。和船をベースにする船外機艇「ベイフィッシャーシリーズ」は20、23、25フィート。オフショアでのフィッシングに対応するのが船外機艇のこの「YFRシリーズ」。オフショアフィッシングのフラグシップモデルはボルボペンタディーゼル船内外機艇の「DFRシリーズ」33、36HT、36FBで構成され、4つのカテゴリーが用意される。
紹介するYFR330の位置する30フィートクラスはオフショアでのフィッシング対応やキャビンの設え等国産艇や輸入艇のライバルの多い激戦区。YAMAHA最大のV8‐5.6 L450ps船外機の登場とともに27での好評を受けていたレイアウトやキャビンなどの優位点を生かし、更に進化させた船体設計で登場した。外洋でのオフショアジギングに対応する数々の条件をクリアするためのチャレンジが感じ取れる。フィッシングポイントまでの高い巡航速度を得るためのハル設計、外洋の高い波、うねりへの高い凌波性能、キャビン内の快適性など期待値は高まる。
横浜ベイサイドマリーナでの内覧と試乗の機会を得た。ポンツーンに舫われたYFR330、思いのほか大きなサイズ感で出迎えてくれる。オプションのブルーのキャビンルーフではないが、明るく広々としたキャビンと十分なスペースのアフトコクピットに船外機と両舷のトランサムデッキが目に入る。前方に、好評のスクエアバウ、バウデッキには高いセイフティレールが取り囲む。左右2名がキャスティングを楽しむことができる。ボンネットにはタックルの準備に便利な釣り座もある。ウォークアラウンドの段差のないサイドデッキ、深いガンネル、ハルサイドでのフィッシングにも有効なスペースだ。後部スターンデッキはフィッシングのベース基地。左右のトランサムにはスタンディングポジションに最適な高さのセイフティレールが設営されている。船外機前方にはモーターウエルレールが用意されロッドホールダー取り付けにうってつけ。キャビンの外、左舷にシャワーが潜み、右舷にセカンドヘルム、アフトステーションが用意される。ステアリング、バウスラスター、ヘルムマスターEX搭載コントローラー、オプションのGARMIN12インチマルチファンクションディスプレイがセットされる。
キャビンドアをスライドさせキャビンに乗り込む。左舷に2名分のパセンジャーシート、バックレストとシートクッションの間にはハンドレールとドリンクホルダー、100Vのコンセント、シート下にはストレージが隠れている。その前方にはダンパー式ナビシートを兼ねるパセンジャーシート、右舷に一人用のシート、その右にドリンクホルダーにエアコン吹き出し口。右舷前方にヘルムステーション。ダンパーを持つバケットタイプのホールド性の良いキャプテンシート、その前にコンソールパネル、2面の12インチマルチファンクションディスプレイ(オプション)、ステアリングの右には7インチマルチモニター、コントローラー、バウスラスタースティックが整然と並ぶ。頭上にはオーバーヘッドコンソールがありコンパスやBe-Coolエアコン操作パネルにマリンVHSの設営が可能。シートは5名分が用意される。ヘルムに座ると前後左右の見通しの良いことが分かる。バウバースは休息スペースかつストレージとしても活用できる広さ。右舷には個室ヘッドスペース、トイレが用意される。左舷フロア下にはミドルアンダーバースがある。仮眠スペースとして、または長尺モノの収納にも活用される。
横浜ベイサイドマリーナから乗り出してみる。450psのハイパワーな船外機、コントローラーを押し上げる、ダイナミックトリムコントロールZipWakeはオートに、トルクフルでスムーズな加速、波切、波あたりもソフトでついついスピードを上げたくなる。フィッシングポイントまで急ぐ気持ちに寄り添う心地よい速度感、対向船や浮遊物の回避の回頭にもステアリングにリニアに対応する動きは心地よい。20ノット25ノット30ノット、自由自在なマニュバビリティ、それは快感を伴う走行性能を示してくれる。2条の深いチャインにスクエアバウのワイドなフレアにより走行時のスプレーが叩き落されドライなデッキが約束される。
フィッシングでボートに望まれるのはポイントでの静止安定性と風流れ。最適な低重心化とチャイン幅により静止安定性を確保し、バウからの風流れの削減、ヘルムマスターEXのサポートで流し釣りでのポイント補正が楽になる。
ヘルムマスターEXの機能はオートパイロットによるコースや方位の維持、ジョイスティックでの操船の制御システム。フィッシュポイントではGPSと連動して前後進を繰り返しポイントの保持をする。
久しく釣りをしていないが、安定感あふれる走行性能、ポイントでの安定性、ポイント維持性能、アングラー同士の距離の取りやすさ、ジギングステーション、ベイトタンク等々、エンジョイフィッシングの設えの良さにフィッシングの再開を想わせていた。
諸元
全長10.1m
全幅2.99m
完成質量:4.118㎏
燃料タンク:650L
清水タンク:56L
定員:10名
エンジン:F450AVT2U
プロペラサイズ:D16 7/8×P16
STD:28,500,000円
A_PKG:31,500,000円
プロフィール
Kenji Yamazaki【山崎憲治】
クルマとプレジャーボートに対する情熱と日本人で最も多くの大型プレジャーボートのテスト経験者としての評価が高い、
海外ボートショーでも知られたジャーナリストである。
2008から「ボート・オブ・ザ・イヤー日本」に携わり、現在は「ボート・オブ・ザ・イヤー日本」実行委員長。
2000年から、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」実行委員を務め、現在は同組織で評議委員。
また月刊PerfectBOAT誌顧問。
主な著作は『日本の外車生活』(双葉社)、『新・ニッポンの外車生活』(ネコ・パブリッシング)など。