九谷焼の人気画風「赤絵細描」で絵付けした磁器の香炉である。
赤絵の歴史は比較的新しく、江戸時代後期の1832年頃、宮本屋窯で作られた様式である。宮本屋窯の主工であった飯田屋八郎右衛門が確立させたことから、「八郎手」「飯田屋」とも呼ばれる。明治時代には200～300人もの職人が赤絵に従事し隆盛を極めたが、現在は20名程の作家がその技を受け継いでいる。
赤一色で人物や花鳥を緻密に描き、周りを小紋で埋め尽くして金彩を加えるのが伝統的な画風だが、近年は新進の作家によるモダンな解釈を加えた作品も見られる。
本作は、赤絵細描の技を現代生活に調和した作品に落とし込む若手の作家、梅村めぐみさんによるもの。砂漠を歩く「キャラバン（隊商）」を主題として、アラベスクや瓔珞文様などの要素を持つオリジナルの幾何学文を描き、独自の世界観を表現している。

本品は「飾り香炉」として置いて飾ることを想定して作られているが、
蓋を取り、市販の香炉灰などを入れることでお香を立てて楽しむこともできる。