九谷焼の産地の一つ、能美市寺井町の一角には、置物に特化して製造している地域がある。そこでは獅子をはじめ、観音様、仏像、干支、招き猫など多彩な置物が作られており、その多くに使われているのが「盛」の技法である。粘度の高い絵具をクリームのように絞り出し、厚く盛り上げて立体感のある絵付けで、これは九谷焼の置物を特徴づけるものである。
本作も伝統的な盛の絵付けに則り、熟練の職人が即興的に仕上げた唯一無二の招き猫である。縁起の良い四神獣を大胆に配し、金彩と小紋、花々で彩った招き猫は非常に存在感がある。また、15号を超える大きなサイズの招き猫は制作が難しく、現在はほとんど新規で作られないという希少性もある。