「現代の浮世絵師」と呼ばれ、小学館『ビッグコミックオリジナル』で連載された漫画作品『ヒゲとボイン』や、京都伏見区にある大手酒造メーカー黄桜のテレビCMキャラクターである「女かっぱ」のキャラクターデザインなど、数々の作品を遺した小島功さん。本品はその代表作である美女画を、ジクレー版画技法によって再現した複製画である。

ジクレー版画とは、従来の多色刷りの版画やリトグラフとは異なり、顔料系の塗料を紙に直接吹き付けて印刷する技法。
先ず原画をスキャナーで読み取り、デジタルデータ化。次に最大で1,677万色を表現可能な専用の印刷機で印刷する。これにより、微細な発色や濃淡を極限まで再現でき、原画が持つ味わいを余すところなく表現できるのが特長だ。しかも、使用される顔料系の塗料は耐光性、耐水性に優れ、作品を末永く部屋に飾ることができる。
版画やリトグラフを刷る工房が減ってゆくなかで、デジタル技術を活かした印刷技法であるジクレー版画は、アート業界の主流となっている。

この「赤のエチュード」は、小島功さんのファンでもあり、呑み友達でもあったとある会社の社長からの依頼で1992年に制作された作品。長年にわたり、同社の応接室に飾られていたという。この作品のモデルやエピソードを知るのは小島功さんと社長の2人のみという、ミステリアスな作品でもある。