週末2023.12.05

『小学館百貨店』編集長の男の雑貨道

男に生まれたからには誰もが認める実用品に恋をしてはならぬ。愛を注ぐべきは、趣味深き雑貨にある。人間の英知と欲望が程よく混濁した品を古来、男は愛でてきた。成熟した平和な時代だからこその贅沢である。

憧れの運転席に座る夢が叶うファン垂涎の椅子

 先頭車両に乗り、運転士の動きを眺めていた幼きころ。憧れの運転士が座っていたのは、何とも落ち着く青いモケットの椅子。本品は、国鉄時代に造られた鉄道車両の乗務員室に設置されていた運転席のレプリカである。
 この椅子は、品質と素材にとことんこだわりながら、国鉄が持っていたイメージやセンスを製品化するブランド「COQTEZ」が、国鉄時代の昭和49(1974)年当時のディーゼル機関車に取り付けられていた運転席をモデルに、実績のあるメーカーに製作を依頼したもの。長時間の運転でも疲れにくいよう人間工学に基づいた設計、立体的な座面や2本のアームで支えられた背もたれなどを忠実に再現している。
 その座面と背もたれに張られた青いモケットは、国鉄車両の座席に採用されていたものと同じ生地を使用。パイル織物の布地は、しっとりとした手触りで適度なクッション性があり、鉄道ファンならば誰もが一度は座ってみたいと願う特別な椅子である。
 本物の運転席は床にしっかり固定されていたが、本品は座面の下にキャスター付きの脚部を装着。自宅やオフィスなどでの実用性と使い勝手を考慮した。
 鮮やかな青のモケットと、国鉄が定めた色名称のひとつ、国鉄灰緑3号(スレートグリーン)の塗装が美しい運転席の快適な座り心地を心ゆくまで堪能できる。

座面は中央が窪んでいるバケットタイプ。横揺れ時にも姿勢が保てる設計だ。

実際に使用することを考え、高さを調節できるキャスター付きの脚部を取り付けた。

低めに設計された背もたれにもバネが組み込まれており、長時間座っても腰が楽。

背もたれのスチール板と2本のアームの塗装色は、当時の運転席に使われた国鉄灰緑3号(スレートグリーン)を採用。

写真はキハ22形車両の客車座席。国鉄時代に走っていた客車にも青いモケット生地が使用されていた。その手触りや香りを覚えている方も多いだろう。

写真:イメージマート

トランクの中に広がるジオラマで精巧なC11形蒸気機関車を走らせる

 鉄道模型にはさまざまな規格が存在し、日本で主流のNゲージは線路の幅が9mm。今回紹介する縮尺1/220のZゲージは6.5mmと、さらに小さい規格である。
 極小な規格ゆえ、Zゲージの車両幅も1cmちょっと。車両を走らせるためにレールを敷いてもわずかなスペースで事足りるので、机の上でも十分楽しめる。車両は小さいながらも驚くほど精巧な作りで、所有する満足感も高い。
 今回紹介する『トランクレイアウトセット』は、アタッシェケースの中にのどかな田園風景が広がり、国鉄C11形蒸気機関車165号機タイプ(動力車)と国鉄トラ45000形貨車2両を連結した列車が走るジオラマセット。単4形乾電池8本で作動するトレインコントローラーによって走行する。

先頭車両は国鉄C11形蒸気機関車165号機タイプ(左右の除煙板は下半分を切り取った「門鉄デフ」を装備)。都市近郊からローカル線まで短距離線を中心に活躍した小型蒸気機関車である。

冬の夜は自室でコツコツ築城気分を味わう

 長い夜に脳と指先を使って組み立てる壮大なパズル。時間を忘れるほど夢中になれて、大きな知的満足感が得られる趣味のひとつだ。そんな木製パズル「ki-gu-mi」シリーズの「松本城」と「姫路城」を紹介しよう。
 本品はレーザー加工による切れ込みが入った300個を超えるパーツを木製シートから取り外し、コツコツと組み上げていく立体パズル。カッターなどの工具や接着剤は不要なので、誰でも手軽に楽しめる。ウイスキーを飲みながらゆっくり取り組めば、精巧な城の模型が10時間ほどで完成する。
 カラー着色された「松本城」と、ナチュラルな木の色を活かした「姫路城」。ふたつの名城から好きな城を選んでチャレンジしよう。

現在の兵庫県姫路市に1346年に築城されたとされる国宝の姫路城。別名「白鷺城」。日本の世界文化遺産第1号でもある。

写真=NEW姫路城

ケース鞄型の筐体が斬新!デジタル音源も楽しめる

 くっきりしたデジタル音源に慣れたわれわれの耳。久しぶりにレコードのアナログ音源を聴くと、自然な音の温かみに心地よさを覚える。世界的にレコード人気が高まっている背景には、レコード独特の音が再評価されていることがある。レコードのアナログ音源と、現代的なデジタル音源の両方を楽しむことができ、ワイドFMラジオ対応のプレーヤーが本品だ。
 33/45/78回転のレコードに対応し、MicroSDとUSBメモリのデジタル音源も再生できる。レコードのアナログ音源をデジタルメディアに録音することも可能なので、お気に入りの名盤を外出先でも聴けるのはうれしい。
 本体はアタッシェケース型なので、好きな場所に持ち運んで楽しむこともできる。

蓋を閉じれば、アタッシェケースのように持ち運ぶことができる。

カランダッシュとポール・スミスの共演

「カランダッシュ」は、スイス・ジュネーブに1915年に設立された鉛筆工場をルーツとする筆記具メーカー。同社が1969年に発売した「849」は、鉛筆の形状から着想を得た六角形のアルミニウムボディが有名なボールペンのベストセラーだ。今回、イギリスを代表するファッションブランド「ポール・スミス」とコラボし、大胆なカラーリングを施したスペシャルモデルを発表した。
 鮮やかな色使いやストライプ柄で世界的な人気を博す「ポール・スミス」が演出する「849」は、ペン本体とケースをツートーンカラーで統一した、6種類のリミテッドモデル。そのカラーコンビネーションは、「さすがポール・スミス」と感嘆する、ファンならばひと目でこのブランドのデザインだとわかる個性的なものだ。ポール・スミス氏も愛用する本品の書き味はじつになめらかで、ロングセラーたる所以が感じられる。

遠く離れた光景を高画質の動画で残す

 スポーツ観戦や旅行などで動画を撮るなら、今やスマートフォンが定番だ。手のひらサイズながら高画質化が進み、ふだんの撮影なら事足りる。しかし、コンパクトゆえにズーム機能がビデオカメラに比べ弱く、画質も妥協せざるを得ない。そこでおすすめなのが、カメラ内蔵の双眼鏡である。
 折り畳み式の双眼鏡に2インチの液晶スクリーンを搭載した本機は、40メガピクセルの画像と、2.5KのウルトラHDの動画撮影が可能。パソコンがなくても撮ったその場で確認できる。自分の足では近づけなくても、諦めることなく美しい動画を残せる。

2つの対物レンズの間に、最大2.5KのウルトラHD動画撮影ができるカメラを内蔵する。

車の廃材から生まれたユニークなリュック

 ドイツ生まれの「AIRPAQ」は、車の廃材を再利用してじつにユニークなバッグを製作するブランド。使用するのは、車の部品工場から回収したB級品のエアバッグやシートベルト、そしてスクラップヤードから回収したバックル。洗浄したエアバッグに染色を施し、同じく洗浄したシートベルトやバックルと組み合わせて、バックパックに転生させた。独特な風合いやデザインも面白いが、もともとドライバーの安全を守るために作られたパーツを使うので、耐久性も折り紙付きだ。
 捨てられてしまう廃材を再利用するという取り組みの意義もさることながら、まったく同じものは2つとないという、唯一無二のバッグが持つ魅力も堪能したい。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE