愛くるしい瞳に、もふもふの毛並み。まるで本物の動物のようなこの物体は、なんと石に描かれたアート作品。世界中で愛好家が増えている「ストーンアート」だ。
　これは自然界で採取した石にアクリル絵の具でペイントを施したもの。世界にひとつしかない石をキャンバスに見立て、ここに命を吹き込むように筆を走らせる。生命が宿っているように錯覚するリアルな描写は、手にのせるとずしりと重く、ひんやりと冷たい。そこでハッとわれに返って、これは人が作り出したアートだと再認識する過程がじつに楽しい。
　作品を手がけたのは、ストーンアートの第一人者・栗屋近さん。芸能人や著名人がいろいろな分野で才能を競うテレビ番組『プレバト！！』で、アートの講師を務めるストーンアーティストだ。
「無機質な石に有機的な動物を描くことで、両極端なものを合わせる楽しさとおもしろさを感じています」と、ストーンアートの魅力を語る栗屋さん。多摩美術大学で立体デザインを専攻。総合家電メーカーでプロダクトデザインを手がけ、退職後はもともと目指していたアート制作に取り組んでいる。
「使用する石は岩手県三陸海岸のもの。地元の管理者に許可を得て、丸くてつるつるな、気持ちよく絵の具を吸い込む石を探します」と栗屋さん。選び抜いた石を見つめ、そこに動物のポーズや表情を見いだして一つ一つ描いていく。
「実際に手にとって、いろいろな角度から眺めながら石の個性を感じてほしい」と、ストーンアートの醍醐味を語る。
　作品を求める人は、昔飼っていたペットと再会するような気持ちを抱いたり、動物を飼っている友人へのプレゼントとして購入する方が多いとか。玄関を開けたとき、そばにちょこんと座ってお出迎えしてくれるこの子たちに、心癒やされる日々を送ってはいかが。