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ヤマンガラス・小割鉈 池村泰欣作
島の暮らしを守り続ける石垣島唯一の野鍛冶の矜持
住宅街から、カーンカーンと小気味よい音が聞こえてくる。看板を頼りに1軒の建物の奥をのぞくと、そこが目指す「池村鍛冶屋」であった。沖縄県石垣島に残る日本最南端の鍛冶工房、沖縄県下でも昔ながらの“手打ち”を貫く唯一の存在だ。
鍛冶場の奥で、真っ赤に熱した鉄をハンマーで叩くのは、池村鍛冶屋の3代目となる池村泰欣さん(73歳)。作業がひと段落したところで、池村さんはこう話し始めた。
「シャコ貝を捕るための道具を作っていたところです。魚を突く銛や船のアンカーといった漁具も手がければ、八重山諸島で食用にするアダンの芽を採るための槍の穂先やパイナップルの植え付け用の道具も作る。海のもの、山のもの、頼まれれば何でも作ります。それを実際に使ってもらい、さらに改良する。この芋掘り用のヘラは、そうして沖縄特有の簪・ジーファーに似たスプーン型になりました。手によくなじんで、握力のないオバァでも扱いやすいよ」
鍛冶場には用途に合わせたさまざまな道具が並び、八重山諸島の暮らしぶりが垣間見られる。
島ごとに好まれる道具は形や大きさが違う
池村さんは農具や漁具を中心に、暮らしに必要な鉄の道具を作り続けているが、八重山諸島の島ごとにその形が異なるという。
「ヘラひとつとっても、石垣島と竹富島では長さや太さが違うね。竹富島で好まれるのは細くて長いヘラ。与那国島はなんでも大きい。重箱料理に入れる蒲鉾の切り方だって大きいんだから」と、池村さん。
そう聞くと、形の違いは単に地質の問題だけではないようだ。それぞれの島人の要望に応えて、道具を作っているという。
八重山地方で「ヤマンガラス」と呼ばれる山鉈も、与那国島の刃がいちばん大きく、西表島では先が広めで猪の罠を仕掛ける際に土を掘るのに便利な形だ。石垣島ではこの2島のものよりやや小振りで、8寸(約24cm)程度の刃長のものが好まれてきた。薮をなぎ払うような牧場の作業や山仕事に使われている。
今回紹介するのは、石垣島で愛用されてきたヤマンガラスと、キャンプをはじめ野山の作業でも活躍する小割鉈だ。いずれも池村さんが丹精込めて鍛え、磨き上げた逸品である。
それらの工程の一部を見せてもらった。まずは、大まかな刃物の形に鋼を切断。それを炉で熱してはハンマーで叩く作業を繰り返し、成形しながら鍛えていく。「火造り」と呼ばれるこの工程では、現代の鍛冶職人のほとんどは電動ハンマーを利用する。己の技量のみ、腕一本で勝負する池村さんのような職人は稀だ。ハンマーを振り下ろすたびに火花が激しく飛び散る。
熱源には木炭を使用、さすがに炉に空気を送り込むふいごは電動式になったが、原理は変わらない。火箸をはじめ、700~800℃に熱した鋼をつかむ鋏、ハンマーまで、すべての工具が池村さんの自作だという。
火造りが終わった鉈はグラインダーやヤスリにかけてから再び炉に入れて熱し、水に浸けて冷却する。「焼き入れ」である。
「先代から鍛冶屋を継いで40年以上になるけれど、まだまだだね。焼き入れは一生勉強だよ」
そう語る池村さんの真剣な表情に、鍛冶職人の矜持を見た。
経験と確かな技で切れ味と粘りを両立
日本の伝統刃物は、地金に刃となる部分の鋼を接合して作られる。一方、池村さんの手による鉈は鋼のみを使用。鋼は焼き入れで硬度は上がるが、その反面脆くなりやすい。刃先の部分だけを慎重に水に浸け、煙の出具合いや色の微妙な変化を見極める。その後焼き戻しすることで硬度を少し落とし、適度な粘りを与える。こうして切れ味と丈夫さを両立させるのだ。
柄には、沖縄固有種の希少な琉球松を使用。刀身を柄にしっかり収めたら、後は研ぎを待つばかりだ。今回は、小割鉈は普通研ぎを、ヤマンガラスは上研ぎを用意した。島の暮らしを支える実用本意の道具は野趣にあふれ、力強い。
住宅街から、カーンカーンと小気味よい音が聞こえてくる。看板を頼りに1軒の建物の奥をのぞくと、そこが目指す「池村鍛冶屋」であった。沖縄県石垣島に残る日本最南端の鍛冶工房、沖縄県下でも昔ながらの“手打ち”を貫く唯一の存在だ。
鍛冶場の奥で、真っ赤に熱した鉄をハンマーで叩くのは、池村鍛冶屋の3代目となる池村泰欣さん(73歳)。作業がひと段落したところで、池村さんはこう話し始めた。
「シャコ貝を捕るための道具を作っていたところです。魚を突く銛や船のアンカーといった漁具も手がければ、八重山諸島で食用にするアダンの芽を採るための槍の穂先やパイナップルの植え付け用の道具も作る。海のもの、山のもの、頼まれれば何でも作ります。それを実際に使ってもらい、さらに改良する。この芋掘り用のヘラは、そうして沖縄特有の簪・ジーファーに似たスプーン型になりました。手によくなじんで、握力のないオバァでも扱いやすいよ」
鍛冶場には用途に合わせたさまざまな道具が並び、八重山諸島の暮らしぶりが垣間見られる。
島ごとに好まれる道具は形や大きさが違う
池村さんは農具や漁具を中心に、暮らしに必要な鉄の道具を作り続けているが、八重山諸島の島ごとにその形が異なるという。
「ヘラひとつとっても、石垣島と竹富島では長さや太さが違うね。竹富島で好まれるのは細くて長いヘラ。与那国島はなんでも大きい。重箱料理に入れる蒲鉾の切り方だって大きいんだから」と、池村さん。
そう聞くと、形の違いは単に地質の問題だけではないようだ。それぞれの島人の要望に応えて、道具を作っているという。
八重山地方で「ヤマンガラス」と呼ばれる山鉈も、与那国島の刃がいちばん大きく、西表島では先が広めで猪の罠を仕掛ける際に土を掘るのに便利な形だ。石垣島ではこの2島のものよりやや小振りで、8寸(約24cm)程度の刃長のものが好まれてきた。薮をなぎ払うような牧場の作業や山仕事に使われている。
今回紹介するのは、石垣島で愛用されてきたヤマンガラスと、キャンプをはじめ野山の作業でも活躍する小割鉈だ。いずれも池村さんが丹精込めて鍛え、磨き上げた逸品である。
それらの工程の一部を見せてもらった。まずは、大まかな刃物の形に鋼を切断。それを炉で熱してはハンマーで叩く作業を繰り返し、成形しながら鍛えていく。「火造り」と呼ばれるこの工程では、現代の鍛冶職人のほとんどは電動ハンマーを利用する。己の技量のみ、腕一本で勝負する池村さんのような職人は稀だ。ハンマーを振り下ろすたびに火花が激しく飛び散る。
熱源には木炭を使用、さすがに炉に空気を送り込むふいごは電動式になったが、原理は変わらない。火箸をはじめ、700~800℃に熱した鋼をつかむ鋏、ハンマーまで、すべての工具が池村さんの自作だという。
火造りが終わった鉈はグラインダーやヤスリにかけてから再び炉に入れて熱し、水に浸けて冷却する。「焼き入れ」である。
「先代から鍛冶屋を継いで40年以上になるけれど、まだまだだね。焼き入れは一生勉強だよ」
そう語る池村さんの真剣な表情に、鍛冶職人の矜持を見た。
経験と確かな技で切れ味と粘りを両立
日本の伝統刃物は、地金に刃となる部分の鋼を接合して作られる。一方、池村さんの手による鉈は鋼のみを使用。鋼は焼き入れで硬度は上がるが、その反面脆くなりやすい。刃先の部分だけを慎重に水に浸け、煙の出具合いや色の微妙な変化を見極める。その後焼き戻しすることで硬度を少し落とし、適度な粘りを与える。こうして切れ味と丈夫さを両立させるのだ。
柄には、沖縄固有種の希少な琉球松を使用。刀身を柄にしっかり収めたら、後は研ぎを待つばかりだ。今回は、小割鉈は普通研ぎを、ヤマンガラスは上研ぎを用意した。島の暮らしを支える実用本意の道具は野趣にあふれ、力強い。
詳細
【八重山小割鉈3寸5分(普通研ぎ)】全長25cm、刃長10.5cm、刃厚0.75cm。445g。
【八重山ヤマンガラス8寸(上研ぎ)】
全長38cm、刃長24cm、刃厚0.45cm。420g。
ともにブレードは特殊鋼。柄は琉球松(バーナー仕上げ)。鞘はホオノキ(八重山小割鉈3寸5分(普通研ぎ)はオイルステン染め)。日本製。
※正当な理由なく刃物を携行することは違法となります。
※手作り品のため、仕上がりには個体差があります。