公家でも武士でもなく、庶民の文化が花開いた江戸時代。彼らのお楽しみの筆頭といえるのが、同じ時代に大いに華やいだ歌舞伎です。“時代を描いたビジュアルアート”ともいえる浮世絵も、歌舞伎人気とともに発展。何しろ江戸時代に描かれた浮世絵の半分は、役者や舞台など歌舞伎を題材に描いたものだというのです。なかでも「役者絵」は演目や役者の人気だけでなく、そこに描かれた衣裳や髪型、しぐさまでもが真似される、江戸版ユニセックスファッション誌として大いに活用されました。
　浮世絵師のなかでもっとも売れたという三代豊国（国貞）の作品に、美しき少年として描かれた敦盛、名優九代目市川團十郎。彼らが活躍した江戸時代に摺られた良品を額装した本作で、江戸歌舞伎のにぎわいをお楽しみください。
　幕末から明治にかけて活躍し、「明治の写楽」と呼ばれた豊原国周の代表作が、この具足屋から刊行された大首役者絵シリーズ。歌舞伎役者の名跡である沢村宗十郎に先立って襲名される、沢村訥舛の二代目が演じた平敦盛の美少年ぶりにうっとり。