2023.11.09

石臼のコーヒーミル

専門店で味わうような香り高い一杯を求めて、自ら豆を挽いて淹れる。そんな贅沢なひとときに彩りを添える、とっておきの道具を紹介。

石材職人が手作業で製作する珈琲豆専用に開発された石臼

 石臼といえば蕎麦の実を挽く道具を連想するが、本品はなんと珈琲豆専用の石臼だ。製作したのは秋田県八郎潟町で100年以上続く斉藤石材店。同店3代目の齊藤壽幸さんが、珈琲愛好家の妻・暁子さんから「石材加工の技術で珈琲豆のミルを作れないか」と相談を受けたことがきっかけだった。
 試作品で挽いた粉で淹れてみると、苦みばかりが際立ってしまったという。暁子さんはこう語る。
「豆をすりつぶすのではなく、粒の細かな粉と粗い粉が程よく混ざった状態に挽けるよう調整するのが大変でした。目立て(溝)の深さ、切り込みの角度や長さを試行錯誤し、約2か月かけてようやく納得がいくものができました」
 元来、販売予定はなかったが、「非常に香り高いおいしい珈琲を淹れられたので、木工職人と共同で商品化しました」(暁子さん)
 石は地元・秋田の男鹿石(安山岩)、受け皿も同県産の杉を使用。石臼を回すと心地よい音とともに、馥郁たる香りに包まれる。男鹿石は石が摩擦熱を吸収するため、豆の風味が損なわれにくい利点もある。「同じように挽いても粉の状態は毎回違います。それでどんな味に出合えるのかと、愉しみになるんですよ」(暁子さん)

珈琲豆を上臼の窪に広げたら、小さな穴に少量ずつ落とし込む。

引き手を持ち、一定の速度で反時計回りにゆっくり回す。

上臼と下臼の間から挽いた粉が出てくる。

出てきた粉をハケなどを使って受け皿の穴に落とし小皿に集める。

秋田県の斉藤石材店3代目・齊藤壽幸さんが、素材の男鹿石に手斧で丁寧に目立てを施す。石臼はひとつずつ実際に豆を挽いて溝の具合を調整してから出荷する。

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